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メガネ君がどんどんダメ人間になっていく過程を生暖かく見守るサイト。


by rockaway-beach

幻想埋葬師‐Lost Souls Forever‐

 少年は、端的に言えば出来損ないだった。

 低能な父から生まれた無能、それが大方の彼への評価だった。

 実際彼は、その無能に加えて、根拠の無い肥大した自尊心と、矮小な人間性と、そして破綻した価値観を所持する、どうしようもなく腐敗した人間であった。

 ある意味で、彼は被害者であった。

 幼い時分、彼という人間の価値を決めたものは、生まれついての才能であったのだから。これに関しては、彼には一切の責任が存在しない類いの問題だった。

 しかし、彼は実際のところ、幼少時代の彼の狭い世間の評価に比べて、有り余るほどの才能を所持していた。

 それら全ては、一切開花する事無く、少年の中で腐り、消滅した。

 両親は彼に注ぐ一滴の愛情も持たなかった。祖父もそうだった。

 故に彼の価値観は歪んだ。才能をことのほか尊重するようになった。

 崩壊寸前の自我を支えるには、少年は自身で太い支柱を作る他無かった。それは自身こそ才気に溢れた存在であるという、根拠の無い自尊であった。

 故に輝かしい未来に溢れていた筈の少年は、ついに心まで泥土に堕ちたのである。

 つまるところ、既に彼の人生は、生まれたその時点で終わっていたのだ。

 長男であるはずなのに、“慎二”という次男を示す名を付けられた時に。



 無限に連なる可能性の果て、そこにも彼は存在していた。

 ここでも彼は出来損ないであった。唯一の差異は、それを親にさんざん刻み込まれていた点であった。

 この無限の果てで、ついに彼はそれを求めることを止めた。感情を切り捨て、惰性で生きることに決めた。

 結果、それが誰に対しても有益なことだと理解した。

 ただそれでも万物は流転し、時は運命へと進む。

 全てをかなえる願望の器。それをめぐる戦争が始まる。



「正気か、7人目のサーヴァントだと!」

「問おう、貴方が私のマスターか」

「理想を抱えて溺死しろ」

「先輩、どうして……」

「なんでよ、どうして貴方が……」


 
 彼はまた道化を演ずる。どのみち主役とは程遠い身と理解していた。

 自分には先が無いとも理解していた。



「シンジ、貴方は聖杯に願うことがあるのですか?」

「別に無いな。しいてあげるとすれば……」



 だから、彼はもう、本当にどうでもよかったのだ。



「僕をこの世から消して欲しい」



―――だからこそ、もう感じることすらなくなった。

 それは幾度となく繰り返した世界の果てで、

―――求めることにも疲れ果てた。

 擦り切れた男が謳う歌。

―――欲しかったものは一つだけだけれど、それももう手に入らない。

 無価値な男が奏でる挽歌。

―――もとより何も持たない男には、何を手に入れることもできない。

 奇跡など起こらない、ここにいるのは只の人間。

―――希望の果てにあるのは絶望。絶望の最中に生まれるは希望。

 主役達にとってみれば単なる路傍の石であり、邪魔なだけの障害物。

―――連鎖の向こうにあるのは伽藍。気づいた時には既に遅く。

 結局、彼自身の最初において最大の罪とは、

―――積み上げた罪の山に、この幻想を埋葬しよう。

 この世に生まれ堕ちたことなのかもしれない。



 この物語に“英雄”はいない。
















「そんな夢を見た」

「……衛宮、そいつは災難だったな」 
by rockaway-beach | 2005-11-05 15:42 | 嘘予告。