メガネ君がどんどんダメ人間になっていく過程を生暖かく見守るサイト。


by rockaway-beach

カテゴリ:嘘予告。( 5 )

 ―――それは、光の神話。

 その日、衛宮士郎は夢を見た。見知らぬ一人の男が、強大な悪意を前に仁王立ちする姿。既に男は満身創痍。立っていることで精一杯。

 しかし男は揺るがない。確固たる決意を持って、光をその身にまとう。何故ならその男は一人ではなく―――

 そこで、目が覚めた。その日の夜、衛宮士郎は聖杯戦争に巻き込まれ、その男と再会する。男の名は、姫矢准。“セイバー”のクラスのサーヴァント。

「昔、お前そっくりの奴に会ったことがあるよ、士郎。どうしようもないお人よしで、傷つきやすくて…… そのくせ、芯だけは真っ直ぐなんだ」

「……俺は、そんなに強い人間じゃないよ、姫矢さん」

 壊れかけの少年を、男の言葉が癒す。

「いいか士郎、闇に捕らわれてはいけない」

「……それって、どういう意味さ?」

「闇は闇さ。絶望、諦観、悲観…… 闇に捕らわれると、身動きが取れなくなる。それじゃあ駄目だ。ギリギリまで頑張って、ギリギリまで踏ん張らなければ、神様だって奇跡はくれないんだ」

 そんな二人に忍び寄る、闇。

「そんな…… 桜が、ダークファウスト……?」

「士郎、闇に捕らわれるな!!」

 友の裏切り。

「衛宮ぁ…… 僕はようやく力を手に入れたんだ…… 振るって見たくなるのは当然だろ? ……だから、死ねよ衛宮」

「止めろ! ……止めてくれ、慎二!!」

 絶望が諦観を呼び、諦観が少年の足を止める。

「……桜、そっちに行ってもいいのか?」

 悪夢が恐怖を生み、恐怖が悪夢を形作る。

「……!?」

「あ、アーチャー…… なに、これ?」

「スペースビースト、だと!? なぜこの世界に!!」

 世界を侵食する闇の中、一筋の光が現れる。

「……光の、巨人?」

「まさか、ウルトラマン……?」

 それは、誰もが知る希望の形。誰もが思う無敵の代名詞。

「士郎…… “絆”は、“光”だ」

 一人一人が絆を繋ぎ、

「衛宮くん! 先に行きなさい!!」

「貴様に花道を作ってやるのは癪だが、いたしかたあるまい」

「安心してお兄ちゃん!! だってバーサーカーもいるんだよ!!」

 一人一人が希望を紡ぎ、

「坊やにばっかりいいカッコさせられないわ!」

「ふむ、キャスター。気概にあふれているのはいいのだが、少しばかり年のことも考えたほうがいいと思うぞ」

「ええい面倒くさい! 我の宝具で片っ端から蹴散らしてくれるわー!!」

「テメェは少し加減ってモノを知りやがれー!!」

 その絆が、光になる。

「絆…… ネクサス!」

 NEXUS―――それは受け継がれていく魂の絆。

 Fate/and the ultraman nexus
                   
                                      近日後悔




















「衛宮…… 僕は、僕はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
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by rockaway-beach | 2007-07-19 21:40 | 嘘予告。

電波受信警報です

 ―――それは、小さな星の物語。

 聖杯戦争と呼ばれる戦いがある。伝説の英雄を召喚し、互いに戦わせ、最後に勝ち残ったモノはどんな願いでもかなえることができるとされる、現代のおとぎ話である。

 その戦いは魔術師―――マスターが英雄―――サーヴァントを召喚し、ペアを組むことから始まる。サーヴァントとなる英雄は、召喚される地で大いに信仰を集めるものほど強力になるとされる。

 ―――ならば、その戦いが日本で行われるのならば、彼らが召喚されるのは自明の理である。


「ちょっと、嘘でしょ…… あんた、一体何者?」

「そんなことはどうでもいい…… とりあえず、これ食っていいかな?」

 赤い魔女に使役される赤き銃兵。

「だから何で僕の言うことを聞いてくれないんだよォ!」

「いけないなぁ、そういう態度は…… どっちが上か、ちゃんと教育しないとなぁ!」

 少年と、自分以外を信用しない男。

「やっちゃえ、バーサーカー!」

「お前が今日の相手か…… 丁度いい、イライラしてたんだよ」

 少女と狂戦士。

「……命令ニヨリ、貴様ヲ排除≪デリート≫スル」

 操られし赤き忍者。

「……君は?」

「氷川誠…… 人間だ!」

 殺人マシーンと人。

「俺か…… 俺は世紀王……」

 山門に縛られた影の月。

「君は…… 一体」

「俺はこの戦いを止めたいだけなんだ!」

 セイギノミカタと正義の味方。


 ―――誰もが胸の奥に秘めた英雄の姿。人類の自由と平和のために戦う男たち。

 誰が知ろう、彼らの哀しみを。誰が知ろう、彼らの孤独を。


「士郎、凛…… 一つだけ覚えておいて欲しい」

―――跳躍≪ドロップ≫

「俺は正義の味方なんかじゃない…… 弱くてちっぽけなただの人間だ」

―――火焔≪ファイヤ≫

「それでも、皆を守ることが剣崎と…… 友と約束した俺の」

―――双影≪ジェミニ≫

「―――俺の、仕事だ」

―――是、焔なる双身≪バーニングディバイド≫


―――ready

「俺は俺の自由にならない奴が一番嫌いだ……」

―――exceed charge

「でも慎二、お前みたいに、俺にそっくりな奴はもっと嫌いだ!」


「いいぜ…… 面白くなってきたじゃないか」

―――召喚≪アドベント≫

―――召喚≪アドベント≫

―――召喚≪アドベント≫

―――融合≪ユナイトベント≫

「さあ、もっと俺を楽しませろ……!」


「思い出した…… これが、俺の……!」

「村雨…… あんたは!」

「違う、俺は、ZX(ゼクロス)…… 仮面ライダー、ZXだ」


「私は…… しかし人ではない」

「先生は人間です! 俺が証明します! 証明して見せます!」

「人殺しの方法しか知らない私を、人だと言ってくれるのか、君は」

「先生が自分を人じゃないっていうなら、これから人になればいいじゃないですか! 誰にだって人であることを否定する権利なんて無い!」


「最早、自分が人間であったのかすら記憶にないが…… これだけはいえる」

「珍しく饒舌だな、あんた……」

「この覇王剣≪サタンサーベル≫が囁くのだ、お前は世紀王シャドームーンだと、な」


「この戦いが終わったら、皆で焼肉食べに行こうな、士郎」

「そうですね、真司さん」

「そのためにも、あいつをぶっ飛ばさなきゃな…… いくか、士郎」

「はい!」

―――適者生存≪サバイブ≫


 人としての幸せを捨て、どこかの誰かの未来のために戦い続ける、無敵の男たち。人は彼らを―――

「変身!」

―――反転≪ターンアップ≫


―――9.1.3. ……standing by

「変身!」

―――complete


「あ゛ー…… 変身」


「変…… 身ッ!」


「やるしかないのか……」


「だから言っただろう、俺にある記憶は奴との…… ブラックサンとの戦いの屈辱だけだと!」


「変身!」







Fate/stay night ~wake up, the hero~
                                               近日未発表





























































「やはり貴様かぁ! ブラックサァァァァァァァァァァァァン!!」
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by rockaway-beach | 2006-06-02 14:54 | 嘘予告。

空蝉。

 間桐の家には地下牢がある。

 大昔に、実験に失敗した“モノ”を放り込んでいた場所らしい。

 らしい、というのは、私がこれを知っているのはお爺様がふと漏らしたからで、実際に確かめたことがあるわけではないからだ。

 重ねてそのとき、お爺様は言った。

「地下牢に入ってはならぬ。あれは不浄の場所故にな」

 私はお爺様の言うことに逆らうつもりは無かったので、言われたとおりにそこに近づくことは無かった。

 これ以上、痛い思いや気持ちの悪い思いをしたくなかったからだ。

 ああ、なぜ私一人がこんな目にあわねばならないのだろう。

 私には兄がいたらしい。これもまた伝聞で聞いただけなので、断定形を使うのは避ける。何でも、彼に魔術回路が存在しなかったせいで、私は遠坂の家からこの汚らしい…… 失敬、没落した間桐の家に来ざるを得なくなった。

 つまり、全ての元凶は、逢ったこともない兄にあるのである。

 まあ、どうでもいいことではあるが。



 発端は、第五回聖杯戦争における、一組のマスターとサーヴァントであった。

 彼らが繰り返したのは、“暗殺”だった。

 一切姿を見せず、一切の痕跡を残さず、一切の無駄も無しに、確実に相手マスターの命を奪う。

 唯一分かっているのは、相手がアサシンのサーヴァントであることだけ。

 顔の無いマスター。これが現状までに殺した人間は、少なくとも数十人。

 キャスターとランサーとバーサーカーが堕ちた。残るはセイバーとアーチャー、そして私のライダーだけだった。

 そのほかの犠牲者は、お爺様ことマキリ臓硯、教会の神父であり聖杯戦争の監督である言峰綺礼。柳洞寺に在住しているお坊さん全員。そこには我が校の生徒会長である柳洞一成の名前もあった。

 新都でも彼らの仕業と思われる怪死事件が数多く起きている。

 全ての死体に共通するのは、全身の皮を剥がされ、頭髪が剃られて、両目と口が縫い合わされ、両手が組んだ状態で縫われていることである。

 事態は、既に聖杯戦争という枠を飛び越えていた。

 

 お爺様は一つだけ遺言を残した。

「儂が死んで、全てが行き詰った時には地下牢へ行け。そこに全ての解答がある」

 行き詰っていた。先輩と姉さんは恐怖と怒りで、もはや尋常の精神状態ではなかった。悪く言えば狂っていた。錯乱していた。

 このような絶望と理不尽に慣れていた私だけが正常だった。

 私は地下牢に向かうことにした。

 重い石の扉を開くと、ほの暗く狭く長い階段があった。明かりは魔術で灯しているのだろうか。

 鼻をつく空気は黴臭い。足音が多重に反響して聞こえてくる。最下層に到達する前に気が狂いそうだった。

 あまりにも長い階段が終わると、そこには確かに鉄格子があった。

 明かりは入っているらしく、十二分に明るい。牢と言うには広すぎる空間だった。

 その鉄格子の向こう側に、車椅子に座った白髪の男性がいた。

 長年獄中で暮らしてきたわりに、痩躯ではあったが不健康そうではなかった。

 私が入ってきたのには、既に気がついていたのだろう。彼は人好きのする笑みを浮かべて、初対面にも関わらず、自己紹介も無しに言葉を発した。

「間桐桜、いや、遠坂桜と言ったほうがいいのかな? まあそれはどうでもいい。急いでいる様子だが何か“上”で起こっているのかね? 聖杯戦争という現状から察するに、どこかのマスターがアサシンのサーヴァントを使って殺人を犯しているということだと思うが、詳しく聞かせてくれたまえ」

 私はこのとき、とっさに「何故?」と言ってしまった。

「“何故?”だって? 決まっているじゃないか。この地下を知っているのは間桐の人間だけで、なおかつ君は女性だ。ならば君は遠坂から間桐に養子に来た、桜に相違あるまい? 現在聖杯戦争をやっているというのは、そんなものあの爺から聞けばわかることだし、その聖杯戦争中に起こる可能性のある事件で、なおかつ間桐桜がてこずるほどのモノならば、バーサーカーの暴走か、アサシンの暗殺以外にはそう思いつくものではない。そのうち片方にヤマをかけたまでさ。分かったかね?」

 理路整然と、退屈そうに述べる彼に、私は頷くことしか出来なかった。

「一応、自己紹介しておこう。僕の名は間桐慎二。まあ、呼ばれなれてる言い方ではないがね。―――一番呼ばれなれているのは、間桐“チャイルドプレイ”慎二。五歳で完全犯罪の猟奇殺人事件を十件犯した、国際指名手配犯だ」

 ―――それが、その悪魔との最初の邂逅だった。



「自分の品性を恥じる事は無い。それは実に自然な衝動だ」

「恐らく、“彼”はリアリストだよ。現実しか見ていないと言ってもいい」

「これは傑作だ! 非常識を実践する魔術師が、『非常識だわ』などと! こんなに素晴らしいジョークは三歳の時に読んだシェイクスピア以来だよ!」

「殺す意味だって? 本気で言っているのかい? そんなものどこにある?」

「価値を与えるんだよ。“少し”手を加えることでね。君たちにはその価値が理解できないだけだ」

「“彼”は素晴らしい。理解しているよ、“やり方”をね!」

「君らは死体という空蝉を見ているだけだ。この“僕らの芸術”の中身には届いていない。僕はそれを理解できる。彼はアーティストだよ。それも一流だ。本当なら夜通し語り合いたいほどにね!」

「彼はルールを破った。もう彼の作品は芸術じゃない。単なる肉の塊だ」


















































「さて、桜。君は真実に耐えられるかね?」

 彼は、心底嬉しそうにそう言った。





















「趣味だな」

「ああ趣味だ」
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by rockaway-beach | 2005-11-11 17:19 | 嘘予告。

Antichrist Superstar

 ―――それは幼い頃に交わした約束。



 

「わしと来るかね? 小僧?」

 俺はその問いかけに、首を縦に振って答えた。

「そうじゃ、言い忘れておったわ」

 そのじいさんは、忘れていたわりにはもったいぶった口調で言った。

「こう見えてもわしはのぅ、“魔法使い”なんじゃ」



 初めてそいつを見たとき、クソ生意気そうだと思ったのを覚えている。

「今日からお前の兄弟になる、挨拶しろ」

 この言葉が、父さんが数年ぶりに自分にかけた言葉だったことも覚えている。

 そしてそれ以上に、僕の父さんの隣にいた、生意気そうなガキの声を覚えている。

「士郎、今日から間桐士郎だ。よろしく」

 僕は答えもせずに、踵をかえして自分の部屋に帰った。

 これが、僕とそいつの初対面であった。



 いつだったか。たしか小学校には行っていたと思う。たまたま地下室の扉が開いているのを見つけた。

 そこに何があるのか、興味があった。

 一歩踏み出すたびに、脳髄に警告が走った。

(行ってはいけない。きっと後悔する。この先にあるのは理解しがたい何かだけだ。お前が行っても意味は無い。引き返せ、引き返せ、引き返せ)

 しかし、僕はそれを見つけた。見つけて、しまった。



 覚えている。それを見つけてから三週間後の金曜日。途方も無いほどの黄昏の中、僕とあいつは本気で殴りあった。

 魔術師になりたかった僕と、なりたくなかったあいつ。

 本音をぶつけて、本気で殴った。
 
 あいつは結局、一度も魔術を使わないで。僕も結局、一度も隠してたナイフを使わないで。

 二人してボロボロになるまで殴り合って、そのまま二人で大の字になって倒れて。

 茜色から藍色に変わっていく空を眺めて、あいつが言ったんだ。

「限界、だよな」

 僕は答えた。

「限界、さ」

 あいつはそのまま言った。

「もう疲れたんだ。一人で耐えるのは」

「僕もだ」

「そうか……」

 お互い、言いたいことは分かっていた。信頼できるのは、あの屋敷という狭い世界では、本音を交わしたお互いだけだった。それに、そんな打算以上の連帯感のようなものが、お互いの間に交わされている気がした。

「俺たちは―――」

「僕たちは―――」

「「兄弟だよな」」

 それから、あいつは僕の中で、“士郎”になった。

 そうして夕日の茜と夜の藍が、お互いの髪の色みたいだと笑った。



 そして第五回聖杯戦争のときが訪れた―――

 舞台は冬木市。主演は魔術師7人と英霊7騎。

 遠坂凛。冬木市の管理者。才色兼備の天才魔術師。

「士郎くん、覚悟は済ませた?」

「……なるほど、貴様ではないが、虫唾が走るのには変わりない」

 遠坂桜。遠坂凛の妹。弓道部所属。

「―――姉さんは、嫌いです」

「桜の指令は全てに優先します」

 イリヤスフィール・フォン・アインツベルン。無垢なる断罪人。アインツベルンのマスター。

「はじめまして、マキリの能無し後継者とできそこない。さっそくだけど、目障りだから死んでもらうわ。―――やっちゃえ、バーサーカー」

「■■■■■■■――――!」

 葛木宗一郎。教師。元暗殺者。

「………手加減はせんぞ」

「宗一郎様は、やらせない―――!」

 パゼット・フラガミッツ。魔術協会からの派遣者。

「生憎だったな、マキリのマスター。私はこの状況で冗談を言えるほど器用ではない」

「悪りィな坊主。そーゆーことだからよ、死んでくれや」

 言峰綺礼。聖杯戦争の監査官。元埋葬機関。

「ふむ、絶望に慣れた目だ。そして絶望の中に希望を見出す目だ。実に――― 気に食わん」

 そして、間桐士郎。マキリの後継者。

「不思議だな、慎二」

「ああ、そうだな士郎」

「お前が背中にいると―――」

「この絶望的な状況でも―――」

「「絶対に負ける気がしねぇ!」」


 正義の味方なんかにはなれない。

 僕らはそうなるには汚れすぎている。

 英雄になんてなれない。

 僕らはそうなるには弱すぎる。

 僕らは世界を美しいと感じた。

 僕らはそれを守りたいと思った。

 それだけが願い。それだけが希望。

 正義の味方や英雄みたいに格好良くなくたっていい。泥まみれでもかまわない。

 僕らは世界を美しいと思ったから。美しいものを守りたいと思っただけだから。














「………いやそのりくつはおかしい」

「だよなぁ」 
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by rockaway-beach | 2005-11-08 21:35 | 嘘予告。
 少年は、端的に言えば出来損ないだった。

 低能な父から生まれた無能、それが大方の彼への評価だった。

 実際彼は、その無能に加えて、根拠の無い肥大した自尊心と、矮小な人間性と、そして破綻した価値観を所持する、どうしようもなく腐敗した人間であった。

 ある意味で、彼は被害者であった。

 幼い時分、彼という人間の価値を決めたものは、生まれついての才能であったのだから。これに関しては、彼には一切の責任が存在しない類いの問題だった。

 しかし、彼は実際のところ、幼少時代の彼の狭い世間の評価に比べて、有り余るほどの才能を所持していた。

 それら全ては、一切開花する事無く、少年の中で腐り、消滅した。

 両親は彼に注ぐ一滴の愛情も持たなかった。祖父もそうだった。

 故に彼の価値観は歪んだ。才能をことのほか尊重するようになった。

 崩壊寸前の自我を支えるには、少年は自身で太い支柱を作る他無かった。それは自身こそ才気に溢れた存在であるという、根拠の無い自尊であった。

 故に輝かしい未来に溢れていた筈の少年は、ついに心まで泥土に堕ちたのである。

 つまるところ、既に彼の人生は、生まれたその時点で終わっていたのだ。

 長男であるはずなのに、“慎二”という次男を示す名を付けられた時に。



 無限に連なる可能性の果て、そこにも彼は存在していた。

 ここでも彼は出来損ないであった。唯一の差異は、それを親にさんざん刻み込まれていた点であった。

 この無限の果てで、ついに彼はそれを求めることを止めた。感情を切り捨て、惰性で生きることに決めた。

 結果、それが誰に対しても有益なことだと理解した。

 ただそれでも万物は流転し、時は運命へと進む。

 全てをかなえる願望の器。それをめぐる戦争が始まる。



「正気か、7人目のサーヴァントだと!」

「問おう、貴方が私のマスターか」

「理想を抱えて溺死しろ」

「先輩、どうして……」

「なんでよ、どうして貴方が……」


 
 彼はまた道化を演ずる。どのみち主役とは程遠い身と理解していた。

 自分には先が無いとも理解していた。



「シンジ、貴方は聖杯に願うことがあるのですか?」

「別に無いな。しいてあげるとすれば……」



 だから、彼はもう、本当にどうでもよかったのだ。



「僕をこの世から消して欲しい」



―――だからこそ、もう感じることすらなくなった。

 それは幾度となく繰り返した世界の果てで、

―――求めることにも疲れ果てた。

 擦り切れた男が謳う歌。

―――欲しかったものは一つだけだけれど、それももう手に入らない。

 無価値な男が奏でる挽歌。

―――もとより何も持たない男には、何を手に入れることもできない。

 奇跡など起こらない、ここにいるのは只の人間。

―――希望の果てにあるのは絶望。絶望の最中に生まれるは希望。

 主役達にとってみれば単なる路傍の石であり、邪魔なだけの障害物。

―――連鎖の向こうにあるのは伽藍。気づいた時には既に遅く。

 結局、彼自身の最初において最大の罪とは、

―――積み上げた罪の山に、この幻想を埋葬しよう。

 この世に生まれ堕ちたことなのかもしれない。



 この物語に“英雄”はいない。
















「そんな夢を見た」

「……衛宮、そいつは災難だったな」 
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by rockaway-beach | 2005-11-05 15:42 | 嘘予告。